むずかしい禁煙から考える依存の本質 ー楽園では麻薬も無力だー

『むずかしい禁煙から考える依存の本質』

 -楽園では麻薬も無力だ-

残念ながら、この記事を読むには【20分程】が必要となります。

みなさんには、やめられないものってありますか。

「やめられない、とまらない」と言えば、カルビーのスナック菓子を思い出しますが、あれは食べ始めると途中でやめられない。おやつに少し食べるつもりが、食べ始めたら、ひと袋あけてしまったというやつですね。

出典:カルビー

まあ、それほど困りませんよね。レイズみたいに200g近く入っていたら困りますけど、食べきりサイズもありますから買う前に考えれば大丈夫。

さて、世の中には押さえきれない欲望ってものがあります。

お金や、権力、あるいは自由への渇望・・・では、ありません。生きていく上で最低限の機能を果たす為の欲、食、性、睡眠の三大欲求です。 そのなかで、例えば食欲を満たすには食べ物が必要だし、性欲を満たすには対象が必要ですが、睡眠だけは自己完結できますね。活動を止めれば、満たされます。

僕は睡眠が動物にとってもっとも強烈な欲なのではないかと思っています。 僕は学生時代に電車通学をしていました。 ある日、席の埋まった電車の中で女子高生が立っていたんですが、その子はすごく眠そうです。 うとうと、うとうと。ついには荷物を持って立ったまま眠り、つぎの瞬間、近くに座っていた通勤途中のオジサンに突っ込みました。
それほどまでに、睡眠欲は強烈です。 強制的に私達の活動をシャットダウンしてきます。 まるで沢山のタスクを処理しきれずにフリーズしたパソコンを強制終了させるみたいに、突然プツンと意識が消えます。 重大な交通事故の原因も、やっぱり居眠りが多いみたいですよ。

 

そういう欲求もある程度、代わりが利くものです。たとえばお腹が空いたけど食べるものがなくて、ひたすらインスタント食品を食べたとします。 で満腹になった所で、ふと美味しいステーキが出されたら・・・もう、そんなに欲しくないですよね。 ステーキがもったいなくて、口にはつけるかもしれないけど、もう満腹だから、かつての強烈な欲求はないわけです。

 

男性の性欲も似ています。下品な話で恐縮ですが、男性には強烈にムラムラする時があります。そうしてお金もないのに、欲望に任せて、その手のお店に行き、女の人を買います。 しかも少しケチって、指名しなかったものだから、全く好みでない人が現れてしまった。【これ僕の体験談じゃないですよ。】

それでも、やることはやって、そして気付きます。
『俺、なにやってるんだろう?』と。これが俗に言う「賢者タイム」というやつですが、それからもう一軒ハシゴして、自分好みの美女がいる店に行こうという人は少ないわけですよ。

つまり、食欲にせよ性欲にせよ。いくらか質が低くても満たせるものです。代わりが利くんですね。

ところが、世の中にはそれ以上に悪質な欲求があります。

それが手に入らないと、どうしようもなくなる。つまり依存です。(一般的には中毒とも言いますが、それは誤用です。正確には「依存」というのが正しい。)

さて、中毒とか依存と聞いて思い浮かべるのは、煙草とお酒でしょう。一方は「アル中」なんて略され方をするほどに一般的ですが、そうは言っても身近にアル中の人は多くないですよね。やはり一般的で、かつ身近に感じる依存といえばタバコではないでしょうか。

いま日本人男性で3割くらいの人がタバコを吸っていると言われていて(JT調べ)おそらく止められない人が大半です。比べてアルコールのやめられないひと(アル中)は予備軍も含めて3%程度(厚労省公開)だと言われています。 圧倒的にタバコの方が「やめられない、とまらない」状態にあるわけです。

 

これがです。30%と3%と言えば「カンパリ」の原液と、サントリーの「ほろよい」くらい差があるわけですよ。 飲み比べれば、いかにタバコの依存性が高いのか、直感的に味覚が教えてくれるでしょう。 おっと、実は自分はお酒が大好きでして、つい意味のない例えを挟んでしましました。みなさまには「お前こそ、アル中ちゃうんか?」というツッコミをお待ちしております。

 

さて、なんの話だったでしょうか。
そうそう「依存というのは恐ろしい」という話でした。

ここで、もっと危険な依存について考えてみましょう。麻薬などの薬物についてです。私達は「違法な薬物は危険である」という教育を口酸っぱく叩き込まれるので、もうそれ以上考える必要がありません。「危険なものは危険であり、その文化も歴史も、あるいは最新の研究など含め、知る必要がなく『とにかく関わらないのが一番だ!』」という考えに知らぬ間に落ち着いていくのですね。

この記事をご覧になっている人で、ヘロインとコカインの違いが分かる人、どのくらいいるでしょう。まさに3%とかじゃないですか。僕も自分で書いていて、よく分かっていません。『パルプフィクション』という映画で、ユマ・サーマン(キルビルのお姉さんね)がコカインと間違えて、ヘロインを鼻から吸って大変な事になるシーンがあるんですけど、僕の知識はそのくらい。

それで、ですよ。世の中には専門の機関で、真面目にそういった薬物を研究する人たちがいるんです。中でも僕が面白いと思ったのが・・・

ラットパークというネズミの楽園を用いた実験。

幸せな楽園にいれば、薬物依存は起きないのではないかという想定です。

実験内容は【wikipedia】から引用します。

“ラットを1匹だけ入れた普通の実験用ケージと、普通のケージの200倍の広さの中に十分な食料とホイールやボールなどの遊び場所と、つがいのための場所などもある中に雌雄のラットを16-20匹入れた「ラットパーク」を用意した。それぞれ、普通の水とモルヒネ入りの水を用意し、モルヒネを混ぜた水は苦いので砂糖を混ぜて甘くした。

実験用ケージのラットは砂糖が少なくてもモルヒネ入りの水を好んで飲むようになった。ラットパークのラットはどんなに砂糖を入れてもモルヒネ入りの水を嫌がった。実験用ケージではモルヒネに依存性を示すようになったラットも、ラットパークに移すと普通の水を飲むようになった。実験用ケージで長期間も強制的にモルヒネ入りの水を飲まされ中毒の状態になったラットは、ラットパークに移されるとけいれんなどの軽い離脱症状を見せたが、普通の水を飲むようになった。”

つまり、幸せな環境で薬物依存はおきないし、依存になっても幸せな環境があれば治る。という結論に至ったようです。

論文は1980年にPsychopharmacology誌に掲載されて、以後現代まで賛否両論なんだそうですが、僕は肯定的で面白いと思ってます。

経験談として、もっと個人的な話をしましょう。

僕もたまにタバコを吸っていました。今はほとんど吸わなくなりましたが、食後にもらうと美味しいと感じます。(好きな銘柄はインドネシアのガラムで、甘くてコーヒーにも合うんですよ。)

タバコを初めて吸ったのは高校生の頃で、当時ヤンキーに憧れていた僕は頻繁に吸ってみていたんです。ところが全然、美味しくない。何が良いのか分からないしお金もかかるので、すぐに吸わなくなりました。 今考えてみれは、僕は楽園のネズミと一緒ですよ。幸せに、すくすく育っていたのです。

それからタバコを美味しいと感じるまでの数年間、ほとんど吸っていません。 僕はある瞬間にタバコを「美味しい」と感じました。人生で初めて、タバコを2箱たて続けに買った時は、今でも覚えています。

 

そのとき何があったのか。それは強烈なストレスです。

故郷の岡山を離れて、移住先の熊本でホームレスになった時でした。ホームレスから抜け出してもストレスは、かかり続けました。(ちょっと比較的最近のことなので、具体的には書けないんです。かなり沢山の人にお世話になってホームレスから抜け出したのに、そんな人たちの顔に泥を塗るような、恩を仇で返すような、そんな言い草になってしまいます。)

それで結局、タバコを定期的に吸いたくなるようになって、危機感を感じました。 タバコは健康に悪いとパッケージにまで書いてあって、そのうえお金もかかります。喫煙者のみなさんで平均すると年に10万円程使うそうです。僕は吸い始めだったし、簡単にやめられると思っていたんですが、嗚呼「やめられない、とまらない♪」これが結構難しい。一日一本まで減らせても完全な禁煙にはならない。3日やめるとなんだか吸いたい。

それが、ある時コロッとやめられました。というか1週間吸わなくても平気、もちろん一ヶ月も平気です。でも美味しいから、たまに一本貰うんですよ。それで、またそこから数週間吸わなくても平気。そんな感じになりました。

僕に何があったのか。それはストレスからの解放です。

僕は独立して、毎日を自由気ままに生き、好きなお客さんとだけ取引するスタイルで仕事をするようになりました。(ちなみに結婚指輪とか作ってます☆)
するとタバコを吸いたい欲求が、どんどん下がっていったんですね。

これはまさに、ラットパークの実験通りではないですか。
「依存はストレスが作り出す」僕は一理あると思うようになりました。

もうひとつ、タバコの依存とストレスが関わっているのでないかと感じる面白い話があります。

ひろゆき君ってご存知ですか。2ちゃんねる開設者で、本名は西村博之さん。たまにテレビなんかの討論番組に出演されて、その歯に衣着せぬ物言いが一部のファンに人気だったりします。僕も好きです。

さて、そのヒロユキさんは喫煙者なんですけど、吸わない時間も結構あるらしい。 例えば家では吸わないんだとか。 そして、その気になれば1週間くらいは吸わなくても平気で、だけどタバコは好きなのだそう。 本人はこれを、アメ玉に例えて説明しています。

「例えばアメって美味しいですよね。そして毎日食べてる人も、たまたま職場が変わったりとかで1週間くらい食べないことがある。でも平気。だけど目の前にアメが置いてあれば、食べる。しかし「一生食べてはいけない」と考えると、余計に食べたい。 僕にとってのタバコは、アメと同じような感覚で、『それが他の人のタバコの感覚と、どの程度ズレているか分からない』」という事でした。

えーーと「そんなことないやろ!アメとタバコじゃ依存性が全然違う!」という声が聞こえてきそうです。実際、WHOによるとニコチンの依存性はヘロインやコカインと同程度に高いそうです。じゃあなんでヒロユキさんみたいに「タバコもアメも変わらない」と言える人がいるのか。

少し時代をさかのぼってみましょう。

1965年東京五輪の翌年、日本の男性喫煙率は過去最高の82.3パーセントでした。 これは現在のスマートフォンの普及率より高い数字です。 もう、みんな吸ってた。なんなら吸わない人は喘息などの疾患が疑われた程に、健康な男の大半が喫煙者でした。

それが50年で激減するわけですが、みんな凄い努力で禁煙したんですかね? 喫煙世代がみんな死んで、吸わない世代と入れ替わっている部分も大きいですが、それにしたって「昔は吸ってたんだよね」っておじいちゃん多くないですか。 これは僕の予想ですけど、だんだんとタバコが値上がりしたり健康被害が言われるようになって、自然にポロッとやめた人、結構いるんじゃないかと思うんですよ。

禁煙外来だって、保険適用になったのが2006年ですから、当時そんなにやめるのが困難だったのか疑問なわけです。 多分、いまのヒロユキさんみたいに「その気になれば禁煙できる」って人が一定数いて、そして本当にその気になって禁煙したんじゃないかと思うんです。

 

じゃあなんで今!こんなにも禁煙が困難なものとして扱われているのか。

それは、禁煙を困難に感じる人間しか、いまの喫煙者に残ってないからですよ。
今の時代にわざわざタバコを吸っている時点で、禁煙が困難な人である可能性が高い。

厚労省の有名な調査(国民健康・栄養調査)で、低所得者ほどタバコを吸うという結果が出ていますが、低所得とタバコを結びつけるものはストレスではないでしょうか。 ラットパーク実験を思い出して下さい。 幸せなネズミは麻薬に依存しませんでした。それどころか一度は依存したネズミも楽園で過ごすことで治りました。

ヒロユキさんは「もう日本での生活はイージーモード(簡単)になったので、言葉の分からないフランスに移住して、住民権はラトビアで取得した。そういうハードモード(困難)を楽しんでいます」と言える人なんですよ。(移住の理由は訴訟問題も関係してますが、今回は無視します)そういう生き方なので、ストレスは少ないのだと思います。きっとお金も沢山あるでしょうし、結婚していて綺麗な奥さんもいます。だからこそ「僕にとってタバコとアメは一緒」と言えるのではないでしょうか。

さて、ここまではストレスと依存の関係について、面白い実験と僕の経験談を元にお話しました。

しかし、難しいのはここからです。
だって、現代はストレス社会だから。

もう老後までストレスなんて、なくなりませんよ。いや、もしかすると老後になっても、貯金残高とか病気や怪我とかいろいろ心配で、それって結構ストレスかも。「大体わしの介護は誰がするんじゃ?」とか。 そう考えたら、人生にストレスのない瞬間なんて、来ないのかも。 「あーーあ、宝くじでも当たらないかなあ」なーんて、嫌な話題になってきました。

ストレスとの戦いは激戦が予想されます。あなたがその戦いに勝利し、ついにストレスなき平穏を手に入れたとしましょう。 しかしストレスは敗戦国のテロリストのように、あなたに忍び寄りその平穏な暮らしを脅かそうと、身近に潜み続けます。

だったら、もはやタバコをやめないというのもひとつの手です。なぜなら「止めなくてはならない」という意識が、強迫的なストレスとなるから。

例えば、
「『子供も生まれたし、そろそろ禁煙して欲しい』と妻に言われて、しばらく頑張りました。ところが結局こっそり見えない所で吸ううちに、ここぞ!というタイミングで吸い溜めする癖がついて、そんな自分に自己嫌悪してしまい、ついに気付いたら吸う本数が増えてしまったんですよ。今では普通に家で吸ってます。」なーんてことが起きてしまうんです。 すごい馬鹿馬鹿しいけど、似たようなことは結構ある。 奥さんや恋人が禁煙を望むことで、さらに禁煙を難しくしているんですね。

だからまず前提として「無理ならやめなくていいぞ」という心理的な負荷を下げておく。つぎに美味しいものを食べるとか、温泉に入るとか、ストレスが発散されることを積極的に取り入れる。 そのなかでも凄く幸せを感じている瞬間「お、今はタバコいらないかな」という数時間だけ吸わないでみる。 成功したら、旅行やレジャーを楽しんでる一日だけ吸わない。そして猛烈にストレスを感じた時は好きなだけ吸う。 これを繰り返すというのが、僕のアイデアなわけです。

そもそもですが、禁煙したいなら禁煙外来があります。

きちんと治療を受ければ、その成功率は50パーセントらしいですよ。(ファイザー調べ)保険も適応されて費用は2万円くらいだそうです。喫煙者が一生でタバコに使うお金は、数百万円から多くて1000万円と言われますので、2万円なんて安いもんですよね。 なんでも処方された薬を飲むとタバコを不味く感じるそうです。

最後に、いまさらでありますが、
この記事は禁煙コラムではありません。(え?違うのΣ(=゚ω゚=;)?)
禁煙したければ、早急に専門のお医者さんに相談するのがよろしいとおもいます。

 

さあて、ふりだしにもどって、もう一度聞きますよ。
みなさんには「やめられないもの」ってありますか。

身近な依存症としてタバコについてお話しましたが、世の中には沢山の依存症があります。そして原因は身近に潜んでいます。時にチョコレートに依存することもあるし、あるいは人間関係への依存、ギャンブルや買い物などといった行為への依存、それは本来健全さの証である欲求とは似ているけど全然違う、健康とは対極に位置する病的なものなのですよ。

そして、その根底にはストレスが大きく関わっている。
そしてストレスを甘く見てはいけない。今や病気や凶悪犯が殺しにくるよりも先に自分に殺される可能性がある。若い人なら死因のトップが自殺です。
また依存症だけじゃない。あらゆる病に関わっているのがストレスです。 最近の研究では食べ物よりストレスの方がガンに関係しているという話が出てきたり、またガン治療として「笑い」が効果を発揮すると証明されたりしています。

 

なぜか私達は「ストレス社会だから仕方ない」と、ストレスに抗う事をどこか諦めてはいないでしょうか。確かに簡単に仕事は辞められません。嫌な先輩はいつまでも嫌な奴だし、長時間労働にも耐えなくてはならない。仮に転職しても行く先々でストレスフルな毎日は待ち構えている。
たしかにそうなんです。

しかしだからといって、ストレスを野放しにしていてはいけないのです。

ほんの少しでも毎日が楽になるように、ストレスが減らせるように私達は努力するべきなのです。 それが健康への第一歩であり、そして、そこには依存症を含むあらゆる問題解決の糸口があるのではないかと僕は考えます。

 

長い記事になってしまいました。なんでも12000字で大学の卒論クラスになるそうですが、もう少し頑張るとそのくらいの長さになります。 本業がジュエリーだというのに、ぼくは何をやっているのでしょうか。

さて、依存の本質を考えるという題目でお話してまいりました。僕は「諸悪の根源はストレスだと思います」という結論で終わりといたします。 今後、続きとしまして『ストレスの溜まる職場、家族環境なんだけど、転職も離婚もできない。でもストレスやばい。もう死にたい。』そんな時どうストレスと向き合えばいいのか。 そんなストレスに抗う実践編として、僕の体験談や対策案を中心に「こうしてみるのはどうだろう?」というお話ができればいいなと思っています。

多分、だいぶ先だと思いますので、その間他のコラムを読んで頂ければと思います。僕のエッセイだったり、映画とファッションについてツラツラと書かせて頂いております。 いづれにせよ、更新は不定期で遅いかもしれませんが、どうぞ末永くお付き合いして頂ければ幸いです。

みなさまのストレスが少しでも減っていきますこと、心からお祈りしています。